奈良の自然に抱かれた新しい工房で、作品が生まれる瞬間に触れた一日。2026年4月、薮本寛之さんのもとを訪ねた記録です。静かな時間と、手仕事の温もりが重なり合う特別なひとときをお届けし、2026年11月に陶和で開催される個展情報もご紹介します。
奈良の里山にある陶芸家・薮本寛之さんの工房へ|雨の日の訪問記
2026年4月23日(木)。朝からしっかりと降る雨の中、奈良の山あいへと向かいました。
待ち合わせは名阪国道の針テラス。そこから薮本寛之さんの工房兼ご自宅へと案内していただきます。
古い民家が立ち並ぶ集落を抜け、高台へと上がると、ふっと視界が開けます。木々に囲まれたその場所は、まさに自然と共にある暮らし。
イノシシやシカが日常の中にいる環境で、先日植えた花の苗がすべて食べられてしまったというエピソードも、この土地ならではです。



2026年移転の新工房|ギャラリー・住居・窯場が一体となった空間
2026年2月に移り住まれたばかりというこの場所。
木造平屋の建物には、ギャラリー・工房・住居が一体となっています。別棟には本焼き用の窯場もあり、現在は煙突工事が残っている段階とのこと。
どこにいても季節の気配を感じられる設計が印象的で、窓の外には揺れる木々。時間の流れがゆったりと感じられる空間です。



手仕事でつくられた空間の魅力|しっくい壁とアーチ天井にアンティーク家具
まず案内していただいたのはギャラリー。
薮本寛之さんの作品が静かに並び、その奥にはキッチンが設けられています。
家具はご自身で選び抜いたアンティーク。どれも空間にしっくりと馴染み、時間の積み重ねを感じさせます。
壁はすべてしっくい仕上げ。
やわらかな曲線を描くアーチ状の天井まで丁寧に施工されており、その作業は想像以上に大変だったそうです。
空間そのものにも「手でつくる」という感覚が宿っているようで、作品と深く呼応しているのが印象的でした。
ふと目に留まったウクレレ。
気晴らしに弾かれることがあるそうで、その場で演奏を披露してくださいました。やわらかく、透き通る音色が空間に広がり、雨音と重なって忘れがたいひとときに。



陶芸制作の現場|ろくろ・印花・土錬機と作品づくり
奥には制作の場である工房。
ろくろで挽いたばかりの器や、制作途中の作品が並びます。
大きな作業テーブルでは、あの印花や鹿の文様が彫られているのだと思うと、自然と見入ってしまいます。
次回の個展(陶和のではありません)に向けた作品も一部拝見し、秋の陶和での個店がますます楽しみに。
今回導入された土錬機も大活躍。削った土を再生できるため、制作の効率と質を支えている重要な存在だそうです。






リビングでのひととき|手作りフィナンシェと個展打ち合わせ
今回は特別に住居スペースのリビングキッチンにも案内していただきました。
木の香りが心地よく広がる空間で、薮本寛之さんお手製のフィナンシェをいただきながら、11月の個展について打ち合わせ。
外はあいにくの大雨で散策は叶いませんでしたが、リビングの高い位置に設けられた大きな窓からは、しっとりと濡れた木々の風景が広がります。
これから訪れる新緑の季節も、きっと格別なのでしょう。






奈良の自然と暮らす日常|鹿やイノシシと共存する環境
この土地では、自然は“風景”ではなく“日常”。
イノシシやシカが身近に現れる環境での暮らしは、決して便利さだけでは語れない豊かさがあります。
その一方で、植えたばかりの花の苗が食べられてしまうという出来事も。
自然と向き合いながらの暮らしが、そのまま作品の背景として息づいているように感じられました。
【陶和で出会える】藪本寛之さんのうつわ|2026年11月個展のお知らせ
この素晴らしい環境の中で生まれる薮本寛之さんの作品たち。
その一つひとつが、自然と時間、そして丁寧な手仕事によって育まれています。
2026年11月には、うつわギャラリー陶和にて個展を開催いたします。
どんな作品が並ぶかと思うと、今から楽しみでなりません。
工房で感じた空気や時間、そのすべてを、ぜひ陶和の空間で体感していただけたらと思います。
皆さまのご来場を心よりお待ちしております。

