土を削って絵を描く──吉村尚子さんの「搔き落とし」技法に宿る手仕事の美

吉村尚子さんの掻き落としの器

今回は、当店でもファンの多い陶芸作家・吉村尚子さんの「搔き落とし(かきおとし)」という技法についてご紹介したいと思います。

この技法、実はとても手間のかかるもの。でもだからこそ、器ひとつひとつに、作家の思いと手仕事の温もりがしっかりと刻み込まれているんです。

目次

「搔き落とし」とは?──土を塗り、そして削る

搔き落としとは、器の素地に別の色の土を塗り、その上から針のような道具で模様を削って描く技法のこと。
土を“塗ってから削る”という、ちょっと不思議な工程ですよね。

吉村さんの場合は、藍色に発色する土を器面に塗り、その上からカリカリと模様を彫るように描いていきます。器の表面がまだ“生乾き”の状態でなければならず、細く尖った針のような道具で、丁寧にひと筋ずつ削っていく…そんな地道な作業です。

少しでも手が滑ると、一からやり直し。

でも、その分、完成した器には、ほかにはない一点ものの魅力があります。

同じモチーフでも、一つひとつが違う表情に

たとえばこちらの【搔き落としのカップ】

吉村尚子作掻き落としのカップ

カップの柔らかい曲面を、細い針でぐるりと削って模様を描くのは、まさに職人技。丸い器の表面に細かく模様を入れていくには、集中力と技術、そして手の感覚が欠かせません。

同じ模様を描いているように見えても、よく見ると線の太さや角度が少しずつ違っていて、それがまた“手仕事の味わい”になっています。

吉村尚子作 掻き落としカップ

筆と針──ふたつの技法を融合させた器

吉村さんは「搔き落とし」と「染付(そめつけ)」を組み合わせた作品も多く手がけられています。

例えばこちらの【輪花大皿・龍】

輪花大皿の龍

外側は筆で描かれた線が美しい染付。中央の龍は、針で丁寧に削り出された搔き落とし。
実際に触れてみると、龍の部分にわずかな凹凸が感じられて、まるで絵が浮き出ているかのような立体感があります。

輪花大皿の龍

同じ青でも、筆と針では、表情がまったく異なることに気づかされます。


見ごたえある器──飾っても、使っても美しい

こちらの【搔き落とし皿】も、全面に施された模様が目を引く作品です。

吉村尚子作 掻き落とし皿

角度を変えて眺めてみると、一本一本の線の重なりが光の加減で浮かび上がり、作家の真剣なまなざしと熱量が伝わってくるよう。

手に取るたび、気づかなかった模様の繊細さに心が留まり、使うたびに愛着が増していく──そんな器です。

搔き落としの器は、日々の暮らしを少し特別にしてくれる

搔き落としの器は、どれもが一点もの。手間と時間を惜しまずに作られたその佇まいには、量産品にはない“心の余白”のような美しさがあります。

暮らしの中に、そんな器がひとつあるだけで、食卓がぐっと豊かに、やさしくなります。

ぜひ、店頭やオンラインショップで、実際にその表情を見てみてくださいね。


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